Research Abstract |
アークプラズマを用いた溶接現象は,作動ガスの組成や対象母材(陽極)の化学組成の影響を強く受けることは広く知られている.しかし,溶接現象がそれらになぜ影響されるのか,あるいは,どのようなメカニズムで影響を受けるのか等はほとんど理解されていない.そこで本研究では,溶融陽極から蒸発した金属原子がアークプラズマ中に存在する場合に研究のターゲットを絞り,光学的手法を用いてアーク・陽極境界層の形態に与える金属蒸発原子の影響を明らかにすることを目的としている. 研究の方針としては,当研究室において本研究と平行して行っている,陽極が溶融しない場合(水冷銅陽極を用いた場合)のアーク・陽極境界層の観察結果と比較することによって,本研究で得られた実験データを研究成果にまとめ上げるものとする.なお,溶融純金属として,Cu,Al,Tiを選定し,溶融合金として軟鋼を選定した. アーク電流50Aの場合,分光計測の結果から,溶融金属の種類に関わらず,境界層において電子密度が減少することが示された.一方,アーク電流150Aの場合,同様の分光計測の結果から,溶融金属の種類に関わらず,境界層の電子密度はアーク電流50Aの場合に比べてかなり高く,境界層においてほとんど変化しないことが示された.これらの結果は共に水冷銅陽極を用いた場合と全く一致した.したがって,金属蒸発原子は境界層で生じている物理形態を本質的に変えるものではないことが結論づけられる.本研究では,アーク電流が50Aの場合と150Aの場合の2条件でしか実験を行っていないが,アーク・陽極境界層に与える金属蒸発原子の影響や金属種類の影響は,恐らく,低電流アークで見られる形態から高電流アークで見られる形態への遷移条件(電流値)がシフトすることにあると推察される.
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