Research Abstract |
エキシマレーザー照射による高分子材料表面の加工・改質を行ない,人工臓器の生体適合性表面の設計,バイオセンサーへの機能性の付与,あるいはマイクロマシンなど超微細構造体作成のための基本技術を開発した。 (1)医用器材の精密加工・改質技術:エキシマレーザー照射による高分子表面加工・改質 医用デバイスの素材となる種々の高分子フィルムに対し,KrFエキシマレーザー(248nm)を高エネルギーで照射し,爆蝕による微細エッチングを行なった。吸光係数の大きなポリイミド,ポリカーボネートフィルムは単位パルス当たりの爆蝕深度が浅く,加工精度が優れていた。 ビニルポリマーにArFレーザー(198nm)を低エネルギーで照射し,表面改質を行なった。ポリビニルアルコールに照射すると,表面の酸素組成比が減少し,側鎖の水酸基の解裂を示唆された。また、ポリ(p-アミノスチレン)の場合,窒素組成比の減少と同時に酸素組成比が増加し,水濡れ性となった。側鎖のアミノ基の解裂と同時に酸化が生じた。エキシマレーザーの照射波長と強度を選択することにより,表面組成変化,および親水,疎水性の付与の可能性が示唆された。 (2)エキシマレーザー光を利用した新しいハイドロゲルの表面固定化 エキシマレーザーを用いた新しいハイドロゲルの表面化学固定法を開発した。ハイドロゲルの表面固定化は医用高分子材料の表面改質・機能化の基盤技術の一つとして重要である。基材とした2枚のポリエチレン(PE)フィルムの層間にポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)(PDAAm)をキャストし,3層型の積層フィルムを作成した。これにArFレーザーを照射すると,PE表面にPDAAmから成るハイドロゲルが形成されると同時に化学固定された。このゲル固定化表面では血小板の粘着が抑制された。また,ゲル内に抗血小板凝固剤であるヘパリンを包埋,あるいは基材表面に固定化できた。
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