Research Abstract |
ポリイミド膜は、気体を選択的に透過させる分子ふるい性を有するが、透過速度の向上が望まれている。本研究では、ミクロ多孔質構造の発達に有効な炭化法により、ポリイミド膜本来の選択透過性を損なうことなく透過速度を向上させることを試みた。 3,3',4,4'-biphenyltetracarboxylic dianhydride(BPDA)及び4,4'-oxydianiline(ODA)をDMAc中で反応させ、ポリアミック酸(PAA)を合成した。多孔質Al_2O_3中空管上にPAAをDip-coatingし、300℃でイミド化する操作を3回繰り返すことにより、ピンホールのない膜厚約5μmのポリイミド膜を調整した。ポリイミド膜をN_2気流中で500〜900℃まで加熱し、炭素膜を得た。調整した膜について、He,CO_2,N_2,CH_4,C_2H_6及びn-C_4H_<10>の透過速度を測定した。ガス透過速度の分子径(動的直径)に対する依存性を調査したところ、透過速度は、分子径の増加とともに減少した。He(分子径0.26nm)の透過速度がC_2H_6(0.40nm)の10^2〜10^4倍であった。炭化によりガス透過速度は著しく増加し、前駆体であるポリイミド膜の10〜1000倍に達した。ガス透過速度は、ポリイミドの熱分解が始まる500℃付近から急激に増加し、600〜700℃で極大となった。He透過の活性化エネルギーは、ポリイミド膜では、20kJ/molであったが、炭化膜では、5〜10kJ/molまで低下した。別途調製したフィルム状のポリイミドとその炭化物について、25℃におけるCO_2吸着実験を行い、径がCO_2の最小分子径(0.33nm)以上のミクロ細孔容積を算出した。細孔容積は炭化温度と共に単調に増加し、800℃炭化物では、0.36cm^3/gに達した。細孔容積の増大がガス透過速度の増大の一因であると考えられる。炭化膜について、CO_2透過速度とCO_2/CH_4分離係数の関係を調べた。従来報告されたポリイミド膜について得られたデータと比較したが、炭素膜は、これらと同等以上の高い分離係数(50〜140)を示した。
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