Research Abstract |
本研究ではジアリールエチレンダイマーカチオンラジカルの立体的および電子的構造と反応性の相関について以下の検討を行なった。 1.一連の電子供与・求引性置換基(OMe,Me,H,F,Cl,COOMe)を有するジアリールエチレンを合成した。これらを77Kn-BuCl中でγ線照射した後、昇温しながら吸収スペクトルを測定してモノマーカチオンラジカルの減衰とダイマーカチオンラジカルの生成を観測し、ダイマーカチオンラジカルの相対強度からその生成効率を評価した。一方、分子軌道計算によりモノマーカチオンのオレフィン部の電子密度を求め、正電荷の局在化とダイマーカチオンの生成効率との相関を解明した。 2.各種のジアリールエチレンダイマーカチオンラジカルをDCE中のパルスラジオリシスにより生成し、その吸収スペクトルがカチオンサイトとラジカルサイトの重ね合わせであることを見いだした。求核試薬(メタノール)およびラジカル捕捉試薬(酸素)を一連の濃度で添加した系について、カチオンサイトおよびラジカルサイトの寿命を求め、その添加物濃度依存性からそれぞれの反応速度定数を決定した。酸素雰囲気下ではカチオンサイトの吸収が長波長にシフトし、酸素がラジカルサイトに付加してパーオキシカチオンが生成したと推定された。 3.アクリジニウム塩を電子受容体として光増感反応を行ない、ジアリールエチレンが効率よく電子酸化を受けることを見いだした。この反応系においても放射線照射と同様にダイマーカチオンラジカルの生成が観測された。酸素雰囲気下で光反応を行なうと酸素分子がダイマーカチオンラジカルのラジカルサイトに捕捉されて生成したと推定されるジオキサン型の生成物が得られ、パルスラジオリシスにおけるパーオキシカチオンの生成が裏付けられた。レーザーフラッシュホトリシスを行なったところ、酸素雰囲気下ではパルスラジオリシスと同様にパーオキシカチオンの生成とみられるカチオンサイトの長波長シフトが観測された。
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