Research Abstract |
金電極をチオール類の存在する溶液に浸漬すると,電極表面にチオール類が化学吸着して自己集合単分子膜を形成することが良く知られている.また最近の研究により,空気中で単分子膜に紫外光をを照射すると,チオール類が酸化されて有機スルホン酸となり,電極表面から脱離することが明らかにされた.本研究はそのような性質を利用して,信号/ノイズ比が極めて高く,高速の応答性を有するマイクロ電極の集合体を簡単に作成する方法を開発し,その基本的な電気化学特性を調べることを目的として行った.本年度の研究によって得られた成果の概要は以下の通りである. (1)ペンタデカンチオールまたはオクタデカンチオールの自己集合単分子膜を形成させた金電極を,K_4Fe(CN)_6を溶解した電解液中に浸漬しそれに光照射すると,紫外光のみならず可視光を照射してもチオールの脱離が起こることを見出した.そしてその脱離の速度は,空気中で紫外光を照射したときのそれよりも数倍速いものであった.また,単分子膜が被覆した電極は電気化学反応を全く行わないのに対し,光照射することにより露出した金表面では,電気化学反応が通常の金電極と全く同じように起こることを明らかにした. (2)上記の性質を利用して,電解液中に浸漬させた単分子膜被覆金電極に数十マイクロメーターの大きさのレーザースポット光を照射し,その部分のみの単分子膜を除去したものを電極として用いると,マイクロ単電極の特性を示すことがわかった.また,スポット光を電極表面の異なった位置に照射し,複数個のマイクロ電極を作成することにより,マイクロ単電極の特性を有し,なおかつ高感度な電極を作成することに成功した. (3)(2)と同様の原理によって,単分子膜被覆金電極の表面にフォトマスクを通した光を照射することによりマイクロ電極集合体を作成し,その電気化学特性を調べたところ,理論的に予測されている挙動と一致することを明らかとした.また,実用的に用いるのに充分な耐久性も備えていることも確認した.
|