Research Abstract |
圧電性及び焦電性を示すポリフッ化ビニリデン(PVDF)に電気化学的重合により導電性高分子となるピロールをブレンドし,外部からの負荷により材料中に生じる熱,ラジカル及びPVDFの内部起電力をピロールの重合により消費すると共に,生じたポリピロールによって,材料自身が補強される,自己改質特性を示す材料の開発を試みた。 実験計画にもとづき、フィルムをキャスト法により成膜したもの、表面にドーパントとして第二塩化鉄を含浸させたもの、さらに、延伸したものを用いた。 [結晶構造と物性]ブレンドフィルムはピロールの濃度の増加に伴い高い圧電性を示すPVDFのβ型結晶が増加し,自発分極がほとんどないα型結晶はサイズが小さくなり減少した。超音波照射負荷後ではβ型結晶がさらに増加傾向にあり、フィルムの表面の電気伝導度は5〜7桁程度高くなり、ポリピロールの生成が確認された。また、曲げ弾性率は、ピロールのブレンドにより高濃度では2倍以上高くなり、超音波の照射により、さらに1.2〜1.4倍高くなった。 [ドーパントの効果]第二塩化鉄はピロールを重合し、また、ドーパントとしての効果が期待できる。第二塩化鉄を含浸したブレンドフィルムは、超音波負荷によって初めてピロールが重合し、黒色に変化した。自己改質特性も塩鉄を含まない場合に比べ優れている。 [β型結晶の効果]延伸したブレンドフィルムは、他のブレンドフィルムに比べβ型結晶がよく成長し,分子配向性も高い。超音波負荷による引張弾性率の上昇が最も大きく、高い自己改質特性を示した。 この自己改質特性は振動性負荷の集中に対し効果的であり、材料の信頼性の向上に寄与するインテリジェントマテリアルとして、さらに、性能向上が望まれる。
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