Research Abstract |
炭酸カルシウム微粒子(粒径約1μm)を単粒子球殻状に配列させ炭酸カルシウムで結合した構造の壁を持つマイクロカプセルの調製法について研究を行った。同法ではまず水中の油滴を炭酸カルシウム粒子の単粒子層で覆い、炭酸カルシウムを粒子間に析出させ結合する。このバインダー炭酸カルシウムの析出法として当初は空気中の希薄な炭酸ガスをアルカリ性のカルシウム塩溶液に12-24時間吸収させていたが生成効率が低かったため,クエン酸ナトリウムなどの有機沈殿抑制剤の存在下でカルシウム塩と炭酸塩を混合する方法に改良したところ生成効率が大幅に向上した。例えば前法では1gの炭酸カルシウム粒子から得られる中空球体は0.2g以下であったのに対し改良法では1g以上(バインダー重量も含まれるため)となった。そこで本研究では,有機沈殿抑制剤や無機電解質の種類や濃度,水溶液のpH等の条件について詳細な検討を行い以下の結果を得た。 (1)有効な有機沈殿抑制剤の検討:クエン酸塩の他に,酒石酸塩,乳酸塩及びEDTAをそれぞれ抑制剤に用いて結果を比較した。酒石酸塩ではクエン酸塩とほぼ同様の結果が得られたが,乳酸塩やEDTAでは生成効率は前2者より著しく低かった。さらにクエン酸塩でもアンモニウム塩では生成効率が低かった。これは有機酸の解離度,有機酸イオンとカルシウムイオンが生成する錯体の安定度,有機酸添加によるイオン強度やpHの変化等の条件が異なるためと考えられる。そこで以後抑制剤としてはクエン酸ナトリウムを採用した。 (2)現在までに,1.0gの炭酸カルシウム粒子から中空球体を得るには,塩化カルシウム,クエン酸ナトリウム及び炭酸ナトリウムのそれぞれ0.07M(混合後)混合溶液300ml中でバインダー析出を行わせるのが,最適であることがわかった。各電解質の濃度が低い場合,クエン酸添加が過剰な場合,及び溶液量が小さい場合には生成効率は著しく低下した。バインダー析出の最適条件では溶液混合直後に,主に炭酸カルシウム微粒子からなる濃厚な懸濁液が炭酸カルシウム粒子に被覆された油滴を取り込んで生成し,この懸濁液の安定性及び溶液混合により生成した炭酸カルシウム微粒子の成長等の挙動が生成効率に密接に関わっていると推察された。
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