Research Abstract |
セル成型苗に関する研究で,セルの形状が苗の生長に及ぼす影響を量的に詳しく解析した報告はあまりない.そこで本研究では,透明プラスチックフィルムを用いて形と容積が異なるセル(角形)を自作し,セルの形状がキンギョソウ実生苗の生長に及ぼす影響を経時的に非破壊で調査した.主な研究成果は以下の通りである. 1.セルの形を表す指標として,尖り指数s(セルの深さd[mm]と上辺の長さa[mm]の比:d/a)を定義した.これとセルの容積v[ml]を用いることにより,セルの形と容積の影響を量的に解析することができた. 2.セルの深さ(d)を10,20,30,40,50mm,セル上辺の長さ(a)を17.9,20.0,23.1,28.3,40.0mm,セル下辺の長さをa/2として実験を行った.播種後43日目(根鉢形成時)のキンギョソウ苗の地上部乾物重は,W=5.9+2.2s+2.0v-0.33s^2-2.0×10^<-2>v^2+0.83sv(R^2=0.92)で表された.苗の地上部乾物重は,セルの容積が大きく,尖り指数が高くなるほど大きくなった.セルの容積が同じ(v=9.3ml)で,形を変えたセルを用いて調査したところ,容積が同じでも,尖り指数が高くなるほど,苗の生長がよいことが明らかになった. 3.播種後43日目のキンギョソウ苗の根乾物重は,W=7.9+4.2s+1.2v-0.90s^2-1.4×10^<-2>v^2+4.2×10^<-3>sv(R^2=0.71)で表された.根乾物重は,セルの容積が大きいほど大きくなったが,尖り指数の影響は受けなかった.根鉢形成時には,根は培地中に飽和していた.最終的な根乾物重は,セルの形とは無関係に,セルの容積のみで決まると考えられた. 4.画像解析により経時調査を行った結果,セルの尖り指数が高いほど,根毛の発生程度がよく,葉色が濃く,根鉢の形成が早くなる傾向があった.
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