Research Abstract |
本研究では,まず,果汁からの香気成分の抽出,濃縮法について,1.果汁から直接溶媒で揮発生成分を抽出し,減圧濃縮する方法,2.果汁を樹脂に通し,揮発性成分を樹脂に吸着後溶媒で抽出し,減圧濃縮する方法,3.果汁から揮発してくるガスを担体に吸着させることで濃縮する方法,の3つの方法を比較した. その結果,1.,2.の方法はモノテルペンの分析には有効であったが,濃縮の際沸点の低い物質と高い物質との揮発性の違いがあり,定量性に乏しいこと.ガスクロのリテンションタイムが溶媒と近い物質はほとんど測定できないことが明らかになった.それに対して,3の方法では溶媒を用いないため,供試した約20種類のモノテルペン,エステル標品すべてを検出することができた.また,補集条件を検討した結果,液体酸素で洗気し100mlの果汁に約50ml/minで通気したN2ガスをTenaxTAに3時間補集し,さらに,全体の操作を40℃に設定したインキュベータ内で行うことで,定量的に安定して香気成分の補集,分析を行うことが可能であることがわかった. つぎに,日本で栽培されている生食用ブドウ品種から‘マスカット・オブ・アレキサンドリア',‘巨峰',‘ピオ-ネ'を供試し,香気成分の比較を行った.‘マスカット・オブ・アレキサンドリア'ではモノテルペンが主要な香気成分であるのに対して,‘巨峰',‘ピオ-ネ'ではモノテルペンに加えて,n-カプロン酸エチル,2-フェニルエチルアルコール,アントラニル酸メチル等のエステル,アルコール類が検出された. 今後は,現在未同定のピークをGC-MSで同定し,他の品種についても香気成分を分析する.さらに,香気成分組成の遺伝様式,栽培管理と香気成分の関係についても研究を進める.
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