Research Abstract |
イチゴの病害感染防御機構の化学的解明をめざし、麗紅の根の成分精査を行い、感染防御物質と推定される6種のポリフェノール類を単離した。各種スペクトルデータの解析から、それらの化合物は、(+)-catechin,(+)-afzelechin-(4α-8)-(+)-catechin,procyanidin B-3,procyanidin B-6,pedunculaginおよび(+)-taxifolin 3-O-α-L-arabinofranoside(TA)と同定した。フラボノイドであるTAは、天然から初めて単離された化合物であり、エラジタンニンとして単離したpedunculaginは、イチゴからの初めての加水分解型タンニンであった。イチゴの各部位におけるこれらフェノール類の分布を調べたところ、果実中には殆ど含まれず、顎片や根部に多量に含まれていた。特に、TAは、根部において高含量で、重要な感染防御物質である可能性が考えられた。これらのポリフェノール類を指標にして、イチゴでの品種間差異(化学的分類マーカーとしての利用の可能性を探る)、また培養個体中、さらには病害感染にともなう含量変化について現在検討している。ウイルス感染処理が縮合型タンニン類の縮合反応を促進するようであれば、縮合型タンニンを生産している植物細胞に感染処理をおこない、いろいろな植物種での縮合型タンニンの生産向上に応用できるかどうかを調べる。また今回、麗紅にAgrobacterium rhizogenes ATCC15834菌を感染させ、毛状根培養系も確立した。このことは、A.rhizogenes菌が遺伝子導入ベクターとして利用可能なことをしめしている。イチゴから感染防御物質生合成酵素および遺伝子の調製が期待されるので、将来は関連遺伝子をイチゴに導入し、感染防御物質含量の高い形質転換イチゴ(抗病害性イチゴ)の開発をおこないたい。
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