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¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1994: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
ジャガイモ塊茎のリポキシゲナーゼ(LOX)反応系では,脂肪酸ハイドロパーオキサイドからジビニルエーテル結合を有するコルネル酸(CA)が生成する。このような反応は珍しく,炭素鎖に酸素を導入する新たな反応様式のモデルとなる。この反応に関わるCA合成酵素(CAS)は膜結合性酵素であり,また不安定で,取扱いが困難である。種々の可溶化法の中でCASの可溶化にはデオキシコール酸(DOC)が有効であった。しかしながら,各種のイオンや金属キレーター,およびBSAはいずれも本酵素を安定化できなかった。DOCで可溶化された粗酵素を,CMC以下の濃度のDOC存在下でDEAE-セルロース陰イオン交換クロマトグラフィーに供したところ,2本の活性ピークが現れ,少なくとも2種類のCASアイソザイムの存在が予想された。各酵素標品の疎水性カラムおよびヒドキシアパタイトカラムでの溶出挙動はまとまらず,分析条件を引き続き検討中である。一方,ゲルろ過HPLC分析では,240kDa以上の高分子量領域に活性ピークが現れたが,精密な分子量決定は今後の課題である. ジャガイモ塊茎LOXに対するCAの拮抗的阻害作用は報告されていたが,このことの生理的意義は不明である.今回,同作用を再検討したところ,基質である50μMのリノール酸に対し,60μMのCAはLOX反応を完全に阻害したが,より低濃度ではむしろ促進し,特に,30μMのCAの促進作用は3倍に達した.また,ジャガイモ塊茎に傷害ストレスを与え,低酸素条件としてリン酸緩衝液中にてインキュベートしたところ,傷害ストレス後,塊茎組織中のLOXおよびCASの比活性はいずれも経時的に増大し,48時間後に最大に達した.その後,LOX活性は次第に消失したが,CAS活性は72時間後までは保たれた.以上の結果から,環境ストレス下において,CAがLOX反応系の活性を調節しうるとの生理的役割を示唆できた.
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