Research Abstract |
本研究では,石灰岩地域における森林流域と非森林流域での水循環および物質循環の違いを明らかにすることを目的として,山口県秋吉台において湧泉流出量,湧泉水質および土壌CO_2濃度の観測等をおこなった.これらの観測は,継続期間がまだ充分でないため,最終的な成果を得るに到っていないが,現段階において明らかになった点を列挙すると,以下の通りである. 1.石灰岩地域の地形形成の主要因としての溶食作用は,雨水が浸透する過程で土壌から供給されるCO_2量と,溶解反応が起こる石灰岩中での通気性(CO_2に関する開放系・閉鎖系)によって制御される. 2.CO_2に関する開放系,閉鎖系は,石灰岩の空洞率に規定され,石灰岩の溶食が進んで,内部の空洞率が大きくなるにしたがって,閉鎖系から開放系への反応に移行するため,溶食速度が増加するものと考えられた. 3.森林は,土壌中のCO_2濃度の形成において影響を与えていると考えられるが,観測の結果,秋吉台の森林土壌では,草地土壌と比較してCO_2濃度が明らかに高いことがわかった. 4.実際の溶食速度は,森林流域が非森林流域よりも必ずしも大きくなるとは限らない.したがって森林の影響を明らかにするためには,石灰岩の空洞率と溶解反応の開放系・閉鎖系との関係を定量化することが必要であると考えられた.
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