Research Abstract |
【目的】本研究では,実験的ビブリオ感染アユおよび健康アユにオキシテトラサイクリン(OTC)を強制経口投与し,それらの組織内濃度を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)法によって求め,両者の体内動態を薬物速度論的に比較検討した。 【方法】供試魚には平均体重54gの養殖アユを用いた。飼育を水温18.0±0.3℃の流水水槽で行った。(1)健康魚試験区:OTCをアユ用餌料に混ぜ,麻酔した供試魚に投与量が100mg/kgになるようにカテーテルで経口投与した。(2)感染魚試験区:供試菌として静岡県水産試験場浜名湖分場より分与されたVibrio anguillarum93・12A型を用いた。OTCの供試菌に対する最小発育阻止濃度は0.1μg/mlであった。各供試魚の背部筋肉中に供試菌を10^3cells/0.1mlずつ接種した。接種後16時間に,OTC含有の餌料を投与量が100mg/kgとなるようにカテーテルで経口投与した。いずれの試験区とも投薬後,所定時間ごとに5尾ずつ取り上げ,血清,筋肉,肝臓および腎臓のOTC濃度をHPLC法によって求めた。データ解析には山岡らのプログラムMULTIを用いた。 【結果】健康魚および感染魚におけるOTCの血清濃度曲線下面積(AUC)は537および217μg・h/mlであり,両者のバイオアベイラビリティに大きな差異が認められた。血清,筋肉,肝臓および腎臓におけるOTCの消失半減期は,健康魚でそれぞれ53,106,125および117時間,感染魚で63,93,107および123時間であった。また,各組織の消失時間は,健康魚で血清14日,筋肉21日,肝臓35日,腎臓26日,感染魚で血清15日,筋肉19日,,肝臓31日,腎臓30日であり,消失速度は両者で大差なかった。以上のことから,罹病魚のOTCによる薬物治療には,バアオアベイラビリティの低下を考慮する必要があると考えられた。
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