Research Abstract |
水産物加工にともなって排出される残滓(魚腸骨)の相当部分は,魚粉の原料として利用されている.魚腸骨を原料とする魚粉(通称「アラ粕」)の多くは主として養鶏向け配合試料の原料となっている.水産加工業者や鮮魚小売店などから大量に排出される魚腸骨は,魚粉原料として取り引きされることにより,市場メカニズムをとおして有効利用がなされてきた. しかしながら,ここ数年,製品たるアラ粕の1トンあたり価格がかつてない低い水準で推移している.魚粉価格の低迷は,チリおよびペル-を主産地とする南米産ミールの品質向上と,円の為替レートが急速に高まったことによる魚粉輸入の拡大によるところが大きいが,そればかりでなく,大豆粕などの植物性蛋白との競合も見逃せない要因である. 魚粉価格の低迷によって,かつて有価物として取り引きされていた魚腸骨も現在では価格ゼロ,もしくは逆に魚粉業者が処理費用を徴収するケースが増えている.このことは,とりもなおさず,魚腸骨が実態的には商品から廃棄物に転化したことに他ならず,そこに廃棄物処理費用というコストが発生している. 現在の廃棄物処理の制度的枠組みでは,水産加工業から排出される廃棄物は産業廃棄物であり,その処理費用は排出者(この場合は水産加工業者)がその処理費用を負担せねばならないことになっている。しかしながら,唐津水産加工団地協同組合のように,水産加工業者みずからが魚粉生産プラントを持っているケースは少なく,依然として既存の魚粉製造業者が処理を担っている.魚粉価格の低落によって,魚粉製造業者は赤字操業を余儀なくされている現状では,排出者責任の負担という見地だけでなく,地場産業育成という観点から公的助成が必要となっている。
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