Research Abstract |
「概要」 近年,食品成分の生物学的活性の解析が行われるようになり,食品の新たな機能性が解明されつつある.私は,腸内細菌で乳業用乳酸菌として広く利用されているアシドフラス菌が腸管関連リンパ組織(GALT)の一つであるパイエル板細胞を刺激し,サイトカイン(IFNα)を誘起することを見い出した.このことは,アシドフィラス菌が腸管免疫,特にサイトカインネットワークの刺激・増強に関与することを強く示唆するものである.本研究では,腸管免疫に深く関与するサイトカインがアシドフィラス菌の刺激により,GALTの細胞で合成されることを追求し,IL-6に関する以下の知見を得た. 「結果」 GALTより,上皮間リンパ球(IEL),粘膜固有層細胞(LPC)およびパイエル板細胞(PPC)をそれぞれ調製し,アシドフィラス菌(IFNαおよびIL-1α誘導活性を示したL.gasseri20243^T株,5813株)で24時間刺激した.サイトカイン(IL-2,4,6)の誘導活性は,刺激細胞より総RNAを調製し,RT-PCR法により評価した.その結果,アシドフィラス菌刺激によりGALTの細胞よりIL-6の顕著な誘導活性が認められた.具体的には,PPCにおいて,その活性はL.gasseri20243^T刺激で対照の約5倍,L.gasseri5813で約2倍であった.LPCでは,対照では誘導が全く認められなかったのに対し,アシドフィラス菌刺激ではその活性が認められた.しかしながら,IELおいてはいずれの刺激でもIL-6の誘導は認められなかった.さらに,インターセルを用いたPPCとIELあるいはLPCとIELとの共培養系においてIL-6の誘導活性を見たところ,PPCおよびLPCにおける誘導活性は,それぞれの細胞の単独培養系の時より増強された.しかしながら,ここでもIELにおけるIL-6誘導は認められなかった.以上の結果より,アシドフィラス菌(L.gasseri20243^TおよびL.gasseri5813)によりGALTの細胞が刺激され細胞相互的にIL-6が誘導あるいはそれぞれが増強されることが明らかとなった.IL-6は抗体産生の誘導やT細胞の増殖あるいは細胞障害性T細胞への分化誘導等,感染防御において重要な役割を持つので,アシドフィラス菌が腸管において感染防御に関わる腸管免疫をサイトカインネットワークを介して増強する可能性が大いに期待できる.
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