Research Abstract |
小規模和牛繁殖農家を対象に行ったアンケート調査の結果,子牛出荷価格は,5〜6頭規模の農家からの子牛が有意に高かった。この結果を踏まえて,熊本県下の平地水田地帯,中山間地帯,高原地域の5〜6頭規模の繁殖複合経営農家を選んで実態調査を行ったところ,それらのいずれの農家においても,飼料として自家製の稲わらやイタリアングラスを利用し,糞尿は田畑に還元するというように,生物循環を重視した環境保全型の生産が営まれていた。実際,糞尿を田畑に還元することによって,化学肥料の投入量は半分ですむようである。またこのような生産方式によって生産された米は光沢があり,美味しいようである。さらに飼養者は,老人が中心で,和牛の飼養は生きがいや健康のためになっていることが聞き取り調査からうかがえた。 これらの情報に基づき,小規模繁殖複合農家の生産形態を表わすシステムモデルを開発した。このモデルにおいては,稲作部門に関しては,堀江(1988)の稲の生育モデルをベースに熊本県の稲作生産に適合するように改良を加えたサブモデルを開発した。土壌への糞尿の投入必要量については,熊本県が公表している「水稲栽培耕種基準(1994)」に基づくものと仮定した。また,和牛生産部門に関しては,Hirooka&Yamada(1990)の繁殖雌牛と子牛に関する汎用モデルを褐毛和種に適合したモデルを開発した。そしてそれらを統合して,トータルな生産性や収益性を計算できるモデルを作成した。
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