Research Abstract |
電子伝達フラビン蛋白(ETF)は,二つのサブユニット(α,β)とFlavin Adenine Dinucleotide(FAD),AMPの四分子の非共有結合による複合体である。このうちFADは補酵素として働きETFの機能に必要不可欠であるが,AMPを外したETFも元のETFと同等の酵素活性を持っており,AMPの役割は未だはっきりしていない。しかし,in vitroの実験で次のような観察をしている。尿素で一旦変性させたETFを希釈によって再生させてnativeのETFを再構成する際,AMPの濃度が高いほどETFの再生速度が速かった。すなわち,AMPはETFの形成過程で何等かの役割を担っている可能性がある。この再生過程を,(i)各サブユニットのフォールディング,(ii)サブユニット,FAD,AMPのアセンブリ,とに分離して考え,本年度は先ず(i)について研究を行い以下の成果を得た。 1.α,βの変性平衡-Native型(N)とDenatured型(D)との平衡の尿素濃度依存性を調べた。[N]=[D]となる尿素濃度は,αが1.6M,βが1.2Mであった。どちらも0.5M以下では99%以上がN,2.5M以上では99%以上がDとなる事が分かった。 2.α,βのフォールディングの速度論-尿素濃度を4Mから0.1Mに希釈したとき,希釈直後(1sec以内)に既にpeptide CDがかなりの部分回復しており,その後ゆっくりと平衡状態に近づいた。これはDからNへの変換の途中に中間体が存在する事を示す。 3.α,βのフォールディングに対するAMP,FADの影響-AMP,FADの存在下でα,βのフォールディングを起こさせたが,何等の影響も観察されなかった。また,α存在下でのβのフォールディング,β存在下でのαのフォールディングも調べたが同様に影響はなかった。 まとめ考察-αとβそれぞれの尿素変性の性質を知る事ができた。これは,今後の実験計画に役立つものである。また,単純な系でのフォールディングの経路を明らかにした事は,今後行う様々な条件下での実験の基礎となる。AMPはETFの形成過程で働いていると考えているが,本年度の結果から,α,βのフォールディング過程には効いていないことが判明した。AMPの作用点はその後のアセンブリの過程と考えられる。
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