Research Abstract |
本研究者は既に、アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いてクローン化されたオピオイドδ受容体と外来のGTP結合蛋白質(G-蛋白)αサブユニットを同時に発現させた、いわゆる「機能的受容体-G-蛋白再構成モデル」を作成し、NG108-15細胞由来のオピオイドδ受容体(DOR-1)がGi-蛋白(Gilα)と共役してホスホリパーゼC活性化にともなうCa^<2+>依存性Cl-電流(Icl^-(Ca^<2+>))を誘発することを報告した(Miyamae T et al. 1993,FEBS Lett.333,311-314)。本年度はこのモデル系を用いてオピオイドδ受容体応答の脱感受性機構の解析を進めた。その結果、(1)同受容体応答は、高濃度(μMオーダー)のアゴニストの頻回適用によってアゴニスト依存性の脱感受性反応を生じること、(2)この脱感受性反応はcalphostin CなどのプロテインキナーゼC(PKC)阻害薬やPKC阻害ペプチドによって特異的に抑制されること、一方cAMP依存性キナーゼ(PKA)、チロシンキナーゼ、及びカルモジュリン依存性キナーゼ(CaMKII)などに特異的な阻害薬ないし阻害ペプチドは無作用であること、(3)PKC阻害薬或いは阻害ペプチドは、G-蛋白を直接活性化する作用を持つAlF_4-の適用によって惹起されるIcl^-(Ca^<2+>)に対し無作用であること、などの知見が集積された。これらの結果から、オピオイドδ受容体応答のアゴニスト依存性の脱感受性反応は、受容体以後ではなく受容体自身がPKCによってリン酸化されることにより生じることが強く示唆された(Ueda H,Miyamae T et al. 1994,Regulatory Peptides 54,305-306)。従って本年度は、同受容体のシグナル伝達制御機構解明への端緒とも言うべき重要な一知見を得ることができた。
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