Research Abstract |
血液細胞分化におけるGATA転写因子群の具体的な機能を,それらの標的遺伝子を解析することにより理解する目的で,以下のような研究を行った.GATA-1あるいはGATA-2に対する特異抗体を用いて,核内でこれらの転写因子が結合していたDNA断片を単離する方法を確立した.具体的には,まず培養細胞から核を単離し2%パラフォルムアルデヒドにより固定する.ついでミクコロッカス由来ヌクレアーゼによりクロマチンを部分消化した後,界面活性剤により可溶化する.これを塩化セシウム密度勾配遠心にかけ,得られたDNA画分を用いて特異抗体による免疫沈降を行い沈降物よりDNAを回収した.得られたDNAを鋳型として,既に知られている標的遺伝子のGATA配列を挟むようなプライマー,あるいは無関係の遺伝子断片を増幅するようなプライマーによりPCRを行い特異的に回収されているかどうかを検討し,以下のような成果を得た. GATA-1を発現する赤血球系細胞株MELでは,発現しているGATA-1,EKLF,SCL,エリスロポエチン受容体などの遺伝子の発現調節領域にGATA-1が実際に結合していることが示された.これに対して,GATA-2を発現する骨髄系細胞株M1では,GATA-2は,発現しているEKLFとSCL遺伝子の調節領域に結合している他,発現の認められないエリスロポエチン受容体遺伝子の調節領域にも結合していることが示された.このことは,遺伝子によってはGATA-2がGATA-1とは異なった転写調節機能を有する可能性を示唆している.また,エリスロポエチン受容体遺伝子の発現が,結合様式の同じGATA-1とGATA-2の2つの転写因子のバランスにより調節されうることを示している.今後GATA-1とGATA-2の転写調節機構の相違について解析する一方,本法を用いて血液細胞の分化あるいは血液幹細胞の維持に関与するGATA-2の新規標的遺伝子の同定を目指したい.
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