Research Abstract |
我々は,これまでの研究で,Nef蛋白(Nefと略す)特異的に結合するT cell内の蛋白の一種が,トリプターゼTL_2(TL_2と略す)で,あることを発見している。今年度の研究では,NL43,およびHXB 3 HIV-1 Plasmid由来のNefを大腸菌にGST融合蛋白として発現させ,さらにNL43Nefについては,3つのペプチドに分けGST融合蛋白として発現させ,各々を,精製し実験に用いた。TL_2はT cellより分離精製したものを用いた。また,それらの結合状態を,リアルタイムで解析することができるBIAcoreを使用し以下の結果を得た。 1)NL43Nefは,解離定数9.2×10^<-6>MでTL_2と結合する。また,HXB3Nefも同様な解離定数で結合する。この結果は,TL_2との結合が,strainの異なったHIVのNefでも同様に起こることを示す。 2)NL43NefとTL_2の結合は,N末端から数えてHIV-1NL43のneucleotide numberでいえば8789-9140にコードされる領域で起っている。 3)この結合により,TL_2の蛋白分解酵素としての活性は影響をうけなかった。 1)の考察:この結合の解離定数は,Rat CD2とCD48の結合,および,小胞体結合性蛋白とアクセプター蛋白であるsyntaxinとの結合などと同程度であり,この結合は,強くはないが,Nefの細胞内局在がTL_2のそれと極めて近いことを加味すると,生体内で十分意味のあるものであると結論される。 2)の考察:当初,エイズウイルスの膜蛋白であるgp120がTL_2のGPGRの配列に結合していることより,NefのGPGVRを含む配列がTL_2との結合に関与していると予測していたが,このGPGVRは結合には関係ないけれども,GPGRの4番目のアミノ酸RがTL_2との結合には重要であることが明らかとなった。現在,結合部位の詳細を解明しつつある。また結合のbiologicalな意味はまだ不明であるが,NL43NefとTL_2の結合部位を明らかにし,その結合部位にミューテーションを入れて作成したNefをT細胞に発現させることにより,originalなNL43Nefを発現させたものと比較する手法で,明らかにする予定である。 3)の考察:TL_2の働きについて蛋白分解酵素以外の活性の有無を検討中である。
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