Research Abstract |
我々は、宿主・寄生虫特異関係を決定する因子解明への生化学的アプローチとして、寄生虫の糖脂質に着目し、その組成・構造解析行い、寄生虫の寄生現象と寄生虫糖脂質との関わりについて研究を行った。マンソン裂頭条虫より抽出した糖脂質(SEGLx)が、新しい糖鎖構造をもつ糖脂質であることはすでに報告した(J.Biochem.114,1993)が、本年度はSEGLxの生合成経路を調べる目的で,SEGLx以外の糖脂質の詳細な構造解析を行った。SEGLxの前駆体物質であるCMHの化学構造については構造解析は終了し、CMHはほとんどがGal-CerでわずかにGlc-Cerが含まれていることがわかった(Lipids,in press)。その他の前駆体CDH,CTHについても化学構造の解析は最終段階にきており、CDHはGlc1-3Gal1-Cerと微量のGal1-6Gal1-Cerからなり、CTHはGal1-4Glc1-3Gal1-CerとGlc1-(Gal1-6)3Gal-Cerからなることが推定された。さらに我々は、SEGLxの還元末端のガラクトースの6位にもう1モルのガラクトースが付加した構造をもつと推定される分子種Gal-SEGLx(投稿中)も見い出した。このようにSEGLxおよびGal-SEGLxの生合成経路についてはほぼ解明された。また最近我々は、この条虫が寄生した動物の血液中にSEGLxの抗体が存在すことを発見したことから、これら新しい系列に属する糖脂質は感染機構に密接な関係をもっていると考えられ、糖脂質本来の機能面からもさらに詳細な化学構造および局在部位を調べることは、寄生虫の宿主体内における存在状態と機能を考える上できわめて重要であると考えられた。
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