Research Abstract |
当教室において独自に発見されたRa-Reactive Factor(RaRF)は,補体成分を活性化して殺菌する血清因子である.哺乳動物のRaRFは,多糖体結合成分(MBP)と補体活性化成分(P100)からなる複合体蛋白である.グラム陰性桿菌に結合しこれを殺菌するRaRF活性は,軟骨魚類からほ乳動物にいたる種々の脊椎動物の血清中に存在していることから,本因子は動物の初期感染防御に重要な因子であると推定される. 免疫抗体が生後の獲得免疫とするならば,RaRFは持って生まれた自然免疫であり,新たな液性感染防御因子として近年注目されている.我々は,RaRFによる自然免疫の効果が乳児期の易感染性体質を支配していると仮説を立てた.そこで,この仮説についてより多くの情報を得るために,まずRaRFの補体活性化成分P100蛋白のゲノム構造を明かにし,ついでP100遺伝子の多型(多様性)の有無と易感染性との関係を調べるために本研究を実施した. 本研究に於いては,(1)RaRFの補体活性化成分(P100)のゲノム遺伝子構造の決定,(2)遺伝子の多型(多様性)の解明,(3)易感染性体質について初めての分子遺伝学的な解明,そして将来的には(4)易感染性体質の遺伝子診断法への応用等の成果が期待される. 本年度に於いては上記研究目的のうち,(1)のヒトP100のゲノム遺伝子解析を行った.その結果,ヒト100遺伝子は少なくとも35kb以上の範囲にわたって存在し,15個以上のエクソンによって構成されていることが明らかとなった.また,フルオレッセンスin-situ hybridization法により,ヒトP100遺伝子の染色体上の遺伝子座を3q27-q28に,マウスP100遺伝子座を16B2-B3にそれぞれ決定した.現在はP100遺伝子の多型解析を行うために,各エクソンをPCR法で増幅してエクソンの塩基配列変異を検索するとともに,PCR-SSCP法による遺伝子診断法への応用のための基礎的条件の設定を検討中である.
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