Research Abstract |
ダイオキシン(polychlorinated dibezo-p-dioxin: PCDD)、ダイベンゾフラン(polychlorinated dibenzofuran: PCDF)およびそれらの関連化合物の人における毒性あるいは生体作用と芳香族炭化水素水酸化酵素(aryl hydrocarbon hydroxylase: AHH)誘導性の関係については、今まで殆ど調べられていない。しかし、他の化合物による生体毒性とAHHとの間には正の相関が示されている。この研究では、まず、PCDD、PCDFの中で毒性の評価がなされている異性体で、最も人体汚染レベルの高いと考えられている異性体の単独投与による人リンパ球培養細胞のAHH活性に対する作用を検討した。また、環境中には種々の物質、AHH誘導剤や阻害剤、が様々な組み合わせで存在しており、ある化合物は発癌に、またある化合物は発癌抑制に関与していると考えられる。そこで、複合処理によるAHH活性への影響についても検討した。単独投与の場合は溶媒であるアセトンを1.0(AHH活性は0.032 pmoles/10^6 cells/min)としてAHH誘導性(誘導AHH活性/アセトン処理のAHH活性)を記した。2,4,6,8-tetraCDF(0.76±0.09)>OctaCDD(1.31±0.08)>1,3,6,8-tetraCDD(2.06±0.21)>2,3,7,8-tetraCDF(3.63±0.31)>2,3,6,7-tetraCDF(4.29±0.16)>1,2,3,4,6,7-pentaCDF(1,2,3,6,7-pentaPCDF(4.43±0.50)>2,3,4,6,7-pentaCDF(4.71±0.68)>1,2,3,7,8-pentaCDF(6.50±0.81)>2,3,4,7,8-pentaCF(7.29±0.63)>2,3,7,8-tetraCDD(9.11±1.29)>1,2,3,4,7,8-hexaCDF(9.31±1.17)>1,2,4,6,7-hexaPCDF(9.76±1.42)であった。つぎに複合投与の結果は1,3,6,8-tetraCDD+2,4,6,8-tetraCDF(1.65±0.13)、2,3,7,8-tetraCDD+2,3,6,8-tetraCDF(8.27±0.28)、2,3,7,8-tetraCDD+OctaCDD(8.74±0.86)そして2,3,7,8-tetraCDD+1,3,6,8-tetraCDD(13.147±2.26)であった。以上のような結果から、AHH誘導性と毒性の間にも強い正の相関(r=0.87)が認められた。また、毒性の強い化合物と弱い化合物と組み合わせることによって強い化合物の毒性が弱められることが示唆された。
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