Research Abstract |
(1)札幌市での神経芽細胞腫スクリーニングにおける真陽性例・偽陰性例に関して,国立札幌病院で実施されている標準的な検査・治療に従い,入院医療費のモデルを作成した.また,最近の真陽性例,偽陰性例それぞれ1例について,実際に要した費用を調べた.モデルでは,真陽性例は約10万点,偽陰性例は約100万点と計算されたが,実例ではそれぞれ16万点,160万点で,偽陰性例でのモデルと実例との差は,真陽性例よりはるかに大きかった.これは,偽陰性例では強力な化学療法が治療の主力で、大量の抗生物質・血液製剤が使用され,諸検査も頻回に行われてモデルでの予測が困難なのに対し,真陽性例の検査は定型的で,治療の副作用も弱く,入院期間もほぼ一定しているためと考えられた.実例の入院1日当たりの医療費はどちらも2千数百点で大差はなかったが,真陽性例では手術麻酔の点数の,偽陰性例では投薬・注射の点数の占める割合が高かった. (2)乳児に対する神経芽細胞腫スクリーニングの最適実施時期を決定する目的で,1981年から94年までに札幌市での神経芽細胞腫スクリーニングを受検した児を受検月齢によって6ヵ月受検群と7-10ヵ月受検群の2つにわけた.疫学的計算の結果,後者は前者に比べ,真陽性例中の自然退縮例の割合が低く,かつ自然発生例中からより多くの非退縮例を捕捉していることが判明した.マススクリーニングは,現在よりも数ヵ月遅らせた時期に実施すると,より効率的であると考えられた.(詳細は論文として発表,現在印刷中)
|