Research Abstract |
全国から集められた384名の潰瘍性大腸炎の患者とそれぞれの患者に対応した性,年齢,居住地でマッチさせた対照を384名選び,調査票によって過去の喫煙及び飲酒歴に関する情報を収集し,conditional regression modelを用いてオッズ比を推計し,喫煙及び飲酒の潰瘍性大腸炎発生に関与するリスクを明らかにした.非喫煙者に対する喫煙者のオッズ比は0.28(95%信頼区間,0.16-0.47),喫煙中断者のオッズ比は1.52(同,0.89-2.58)であり,喫煙が潰瘍性大腸炎の発症のリスクを低くし,喫煙中断がリスクを高めていることが推察された.非飲酒者に対する飲酒者のオッズ比は0.57(同,0.39-0.83)で,飲酒も潰瘍性大腸炎のリスクを低くしていた.性別に分けた観察でも同様の結果が得られた.喫煙については量・反応関係が認められ,たとえば非喫煙者に対する1日15本未満の喫煙者のオッズ比は0.56,15〜24本の喫煙者0.21,25本以上の喫煙者0.22で,傾向性の検定は有意確率0.0001で有意なものであった.喫煙と飲酒は互いに交絡因子であるが,モデルに双方の因子を同時に組み込んで互いの影響を除去した観察でも同様の結果が得られ,喫煙,飲酒が独立に潰瘍性大腸炎発生に影響を及ぼしていることを明らかにした.さらに,病前の体調不全などにより喫煙を中断する者がいれば,これがバイアスとなって,観察された結果と同様の現象がみられるため,喫煙中断から発病までの期間,及び喫煙中断の理由を観察した.喫煙中断者の喫煙中断からの期間の分布に差はなく,また,症例群の喫煙中断理由で特に体調不全によるものが多い傾向があるわけではなかった.以上のように,本研究では喫煙と飲酒が独立に潰瘍性大腸炎のリスクを低下させ,喫煙中断がリスクを上昇させることを明らかにした.
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