Research Abstract |
正常ラットより作成した摘出生理食塩水灌流肺の灌流圧が安定した後、生理食塩水(CON)、EDRF阻害剤(Nitro-L-arginin;NLA,100μM)、またKチャンネル阻害剤(Tctracthylammonium;TEA,10mM)を灌流液中に投与し(n=各3)、10分後より灌流量を0.04/ml/g/minから3分毎に0.02/ml/g/min増量し圧-流量曲線を作成した.各阻害剤投与前の灌流圧には各群で有意差を認めなかったが、TEA投与により10分間で約4mmHgの灌流圧の上昇を認めた。灌流量0.04-0.18ml/g/minの間で、圧一流量関係は各群ともほぼ直線の関係を示したが、その傾きには各群間で有意差を認めなかった(灌流量0.18/ml/g/minでの灌流圧はCON,NLA,TEA群で各々26±3,28±2,30±1mmHgであった).各群全ての肺において灌流量0.20/ml/g/min以上では、肉眼的に明らかな肺水腫が発生し実験継続不能であった.灌流液が生理食塩水(Ficoll4g/100mlを含む)では粘調度が低く、血管壁にかかるshear stressが十分には得られない可能性を考え、より生理的状態に近くするたみ灌流液を血液に変えて同様の実験を行った。血液環流肺ではベースライン灌流圧、および単位灌流量上昇に対する灌流圧の上昇が増大したが、灌流量0.04-0.18ml/g/minの間では圧一流量直線の傾きに各群で有意差を認めなかった.灌流量0.02/ml/g/min以上では、生理食塩水灌流肺と同様に肉眼的に明らかな肺水腫が発生し実験継続不能であった. 本研究ではラット摘出生灌流肺において、低灌流量(<0.20/ml/g/min、実際のラットの心拍出量の1/5以下)では灌流量の増加に伴う灌流圧の変化にEDRFまたはEDHFの関与がないことを示唆している.しかし、これらの因子の関与が最も問題となる高灌流量での評価は、摘出生灌流肺では不可能であった.今後カテーテル留置ラットを用いてin vivoでの検討を行う予定である.
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