Research Abstract |
申請時の方法では種々の問題が生じ、鉄剤の投与方法および間隔を変更し実験を行った。やむをえず静注用鉄剤を筋注したが(日本国内では静注用製剤のみ入手可能)、吸収の点で問題があり、最終的には筋注用鉄剤を米国から取り寄せることとなり、煩雑な手順を必要とした。 本報告書作製時には、筋注用鉄材投与による肺酸素中毒憎悪と血清中フェリチン値(SF)上昇が確認できた。ラットを空気コントロール群(G1:n=4)、酸素コントロール群(G2:n=4)、鉄剤+酸素曝露群(G3:n=6)に分けた。鉄剤投与群には、iron dextran 15mg/bodyを週1回5週間筋注後に、酸素曝露を開始した。ラットはすべて10週齢時に、100%酸素(もしくは空気)に48時間曝露した。曝露終了後、麻酔下に抜血死させ、左肺を組織湿乾重量比(W/D)測定用に摘出し、残肺にて気管支肺胞洗浄(BAL)を行った。結果(すべてmean±SE)のうちW/Dについては、G1:3.53±0.04,G2:5.66±0.56,G3:6.52±0.10で、G1はG2,G3それぞれの群と有意差(p<0.01)を認めた。BAL液中総蛋白濃度(BALFP)は、G1:6.4±0.4mg/dl,G2:14.8±2.3mg/dl,G3:62.8±9.7mg/dlで、G3はG1,G2それぞれの群と有意差(p<0.01)を認めた。SFは、G2:398.2±70.0ng/ml,G3:1145.6±97.5ng/mlで、両群間に有意差(p<0.01)を認めた。W/DとBALFPで群間有意差に違いがあるのは測定値のばらつきによると思われる。(特にW/Dについてはサンプル採取方法に工夫の余地が残されている。)今後各群のラット数を増やすと共に、BAL液中総細胞数(分画)や肺組織NMR緩和時間T_2も測定し、さらに鉄キレート剤による肺酸素中毒軽減効果を判定する予定である。
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