Research Abstract |
PTCA後の再狭窄予防に対し,これまでに種々の実験系を用い種々の薬剤の有効性が検討されてきたが,実際臨床使用して再狭窄を予防できる薬剤はないのが現状である.平滑筋細胞の中膜より内膜への遊走,内膜における増殖,コラーゲン産生が再狭窄の主たる機序と考えられている.そこで我々は培養血管平滑筋細胞の遊走能,増殖能,及びコラーゲン産生能に対する諸種薬剤(トラニラスト(抗アレルギー剤),nilvadipine(Ca拮抗剤),M-1(ACE阻害剤),E-1020(PDE阻害剤),elastase,colchicine,mitomycin C)の抑制効果につき検討を行った.その結果,抗アレルギー剤のトラニラストが平滑筋細胞の遊走能,増殖能,コラーゲン産生能を臨床使用用量の範囲内で用量依存的に最大50-60%抑制したのに対し,他剤の抑制効果については,臨床使用用量の範囲内では増殖能,遊走能に対する抑制効果は極めて弱いことが判明した.また我々は,トラニラストが血管平滑筋細胞の遊走能や増殖能を抑制する機序を解明するため,Ang II刺激時の細胞内カルシウム濃度の変化に対するトラニラストの作用についても検討した.その結果,我々は,トラニラストはAng II刺激に対する平滑筋細胞の細胞内カルシウム濃度上昇の反応性を有意に低下させることが明らかとなった.細胞内カルシウムは,細胞の遊走や増殖と深く関わっているものと考えられており,今回の実験結果はトラニラストが血管壁のリモデリングを抑制する一つの機序と考えられる.以上の結果より我々は,トラニラストがPTCA後の再狭窄に対する予防薬として大いに期待できるものと結論した.
|