Research Abstract |
最近EDRFの本態が一酸化窒素(NO)であることが判明し、高血圧発症進展の一因子としての関与が注目されている。NO系は中枢内において神経情報伝達に関わっている可能性が報告されており、脳内カテコラミン系やGABA系の異常との関連でこれらの系を修飾し、中枢性にも高血圧発症に関与している可能性が考えられる。今回、NO系の抑制下において昇圧する機序、特に中枢の関与についてラットを用いた基礎的検討を行った。 【方法】実験1;Pentobarbital麻酔下に体重200gの雄性Wistarラットの側脳室に24Gのstainless cannulawo挿入しmini osmotic pumpを用いangiotensin IIのAT1receptor antagonistであるlosartan(100μg/day)の脳室内投与を2週間行った。また同様に大腿静脈にPE10tubingを挿入し、同量のlosartanの静脈内持続投与を2週間行った。2日間の回復期をおいてCONTROL群を含む3群にNOの合成阻害剤であるN-nitro-L-arginine(l-NAME)を飲水に溶解し2週間投与し1週毎にtail-cuff法で血圧測定を行った。 実験2;l-NAMEを2週間投与したCONTROLラットと水道水投与下の正常血圧ラットにpentobarbital麻酔下に大腿動静脈にPE10tubingを、また側脳室内に24Gのstainless cannulaを挿入し、24時間以上の回復期以降に覚醒下で平均動脈圧、心拍数を記録しながら脳室内にlosartan(50,100μg),muscimol(500ng,1μg)の投与を、さらに静脈内にnorepinephrine(2,5,10ng/kg),hexamethonium(25mg/kg)の投与を行った。 【結果】実験1;l-NAMEの経口投与により、CONTROL群では1週目より有意な昇圧を認めたが、losartanの脳室内持続投与群では有意な昇圧の抑制を認めた。しかし、同量のl-NAMEの静脈内持続投与ではCONTROL群と同様の昇圧を認めた。 実験2;l-NAME投与2週後の覚醒下平均動脈圧は対照に対し有意に高値であった(141±6vs103±6mmHg)。覚醒下のl-NAME脳室内急性投与は有意な降圧反応を来さなかったが、脳室内muscimol投与は濃度依存性の降圧反応をもたらし、この反応はl-NAME投与群で有意に大であった。また静脈内norepinephrine投与による昇圧反応及びhexamethonium投与による降圧反応は両群で有意な差を認めなかった。 【結論】l-NAMEの慢性経口投与による高血圧発症初期には中枢のreninangiotensin系が、さらに高血圧の維持には脳内GABA系が関与する可能性が示唆された。交感神経節遮断剤の降圧に両群間で差がないことより、昇圧機序の一部に拡張性神経の関与が考えられた。
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