Research Abstract |
先天性銅代謝異常症の代表的疾患であるWilson病患者における,原因遺伝子の構造異常について検討を行った.1993年12月にクローニングされたWilson病原因遺伝子のコードする蛋白は,銅結合能を持つ膜蛋白でP-type ATPaseの一種であり,肝細胞内における銅の輸送に関与していると考えられている.現在までに,点突然変異,数塩基対以内の欠失・挿入などの遺伝子異常が本疾患患者において数例報告されている. Wilson病患者患者および健常人の末梢血液より,genomic DNAを抽出した.これらのDNAを6塩基認識の制限酵素にて完全消化し,Southern blot法による解析を行った.Probeは,^<32>PにてラベルしたWilson病原因遺伝子のfull length cDNAを用いた.その結果,本症患者の遺伝子に数100塩基対以上の大きさの欠失・挿入などは認められなかった.HindIIIおよびPstIを用いたSouthern blot法にて,制限酵素切断断片多型と思われる多型を認めた.これを利用した家系調査が可能であると考えられた.また,Eco RIにて消化した場合,数例に疾患特異的と思われるバンドが描出された.遺伝子異常による新たなEco RI認識部位の出現,あるいは消失が生じている可能性が考えられた. 本症患者および健常人の肝臓よりRNAを抽出した.上記probeを用いてNorthern blot法を施行した結果,患者肝臓における原因遺伝子のmRNA発現はサイズ・量ともに正常であった.またRT-PCRおよびPCR-SSCP法にて検討した結果,リン酸化部位と7番目の膜通過部位を含む約500塩基対の断片に,コントロールと泳動度の差を認めた症例が存在し,この部位に点突然変異などの遺伝子異常が存在する可能性が示唆された.
|