Research Abstract |
肥大型心筋症(HCM)における心筋ミオシン重鎖(MHC)のdivergent regionにおける遺伝子配列の異常を検索するために,家族性HCM7家系37例,単発例12例を対象としてミオシン重鎖の頭部よりロッド結合部(MHC蛋白の収縮機構上極めて重要なATP,アクチン,ミオシン重鎖の結合部を含む)にいたる第3〜24エクソンを選び,その前後でプライマーを作成してRT-PCR法を行い健常者との塩基配列の違いを検討した。家族性HCMの3代に渡る1家系5例のうちHCM発症例4例全員にエクソン20の点変位を認めた。その結果グリシンよりトリプトファン(Gly741→Trp)へのアミノ酸の置換が確認された。また,1家系でアミノ酸置換のない点変異1例,単発例でイントロンの点変異2例も認めた。また,β-MHC内の2ヶ所のTGリピート領域を用い,7家系の家族性HCMについて連鎖解析を行った。結果は,1家系で組み替えが認められ,6家系で連鎖解析が否定できなかった。このうち2家系で点変異が検出されていることにより,残りの5家系における点変異の可能性も示唆された。また,イントロンやアミノ酸の置換の認められないエクソンの変異は,正常例ではまれなためこれらの事実とHCMの病態との関係もさらに検索する必要がある。 今後の展開としては心筋ミオシン重鎖遺伝子の塩基配列に異常が見つかった患者に対して心筋のエネルギー代謝系の遺伝情報を担うミトコンドリア内の遺伝子塩基配列が同様に肥大型心筋症と深い相関関係を示しているのか解明したい。 この研究成果の一部は第39回日本人類遺伝学会において報告(口述発表)した。また,American Journal of Medical Geneticsに投稿しacceptされた(in press)。鈴鹿医療科学技術大学紀要に投稿しacceptされた(in press)。
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