Research Abstract |
膜骨格蛋白質についての生化学的研究の進歩と膜機能の定量的測定法の開発により,膜骨格の構造と機能の密接な関わりが明らかになってきた。とりわけ,スペクトリン,4.1蛋白質及びアクチン等に量的,質的異常を認める赤血球では変形能,膜安定性等の機能が低下しており早期に網内系細胞に捕えられ,寿命が短縮して溶血性貧血となることが解明されている。本研究ではこれらの膜骨格蛋白質の皮膚(表皮細胞)における機能を解明することを目的として以下の検討を行なった。 角化異常や細胞増殖をきたしている尋常性乾癬および皮膚腫瘍等のさまざまな皮膚疾患におけるこれら膜骨格蛋白質の存在・分布について検討を行ない,各疾患における膜骨格蛋白質の病的意義を検討した。まず角化異常症,尋常性乾癬における4.1様蛋白質およびスペクトリンの存在・分布について検討を行なった結果として乾癬皮膚細胞において4.1蛋白質の異常分布も確認された。尋常性乾癬正常部表皮では基底細胞に4.1蛋白質の分布が強いが,乾癬病変部表皮細胞ではむしろ有棘層にその分布が強く認められた。またイムノブロット法にて4.1蛋白質及び正常表皮細胞にみられる80kDaのバンドのほかに45kDaのバンドが病変部表皮細胞には認められた。一方,スペクトリンの乾癬表皮での存在及び分布は正常部と病変部での大きな違いは認められなかった。スペクトリンは乾癬表皮細胞においても正常部と同様基底細胞に強い分布が認められた。
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