Research Abstract |
まず,正常メラノサイトの培養系の確立にとりかかった.メラノーマ細胞と異なり,メラノサイトでは培地に適当な濃度のTPAを加えて,さらにgeneticinを加えて,線維芽細胞の増殖をおさえてやる必要がある.正常メラノサイトの増殖は遅く,RNAの抽出に供するのに充分と思われる数の細胞を得るのに以下の問題点があきらかになった.また,その後の経過も以下に期待する. 1)通常入手可能な日本人成人の正常皮膚からではメラノサイトの増殖が遅く,充分な細胞密度を得られないためか,2代目の培養に移行する前に増殖が止まってしまう.日本では割礼の週間が一般的でなく,従ってアメリカで新生児男児の包皮から得たものを用いる以外によい方法がないものと思われた. 2)アメリカ国内で得られる包皮は通常白人と黒人のものであるが,黒人由来のものでは特に増殖速度が遅い.液体窒素に凍結保存したものを再生する段では,まず黒人由来のものでは再生しないか,してもほとんど増殖しない.白人由来のものは何とか再生するが,増殖速度はかなり遅く,しかもある程度以上の密度を保ってやらないと増殖しないものと思われた.また,培地の組成などにつき再検討をおこなった.その結果TPAの濃度が重要であると思われた. 3)血清の豊富な培地でなんとか増殖させた細胞にて,アガロースゲル上で認識可能なRNAのバンドを得るのに最低5x10^6の細胞が必要である.それ以下の細胞数では充分なRNAがとれず,エタノール沈殿をしているうちに検出不能になってしまう.これだけの細胞を得るには最低2ヶ月以上は既に確立された細胞から増殖をまたなければならないことが明らかとなった. 4)得られたRNAのA260/A280比はおおむね1.6から1.9で,まずまずの純度であるが,メラニンまたは微量な蛋白の混入を得ている可能性が考えられた.RT-PCR法にてまずHouse keeping geneであるactinのcDNAを得られるかどうかを検討してなんとか,これがRT-PCR法に供されうる純度のRNAであると確認された. 5)さて,チロシンキナーゼのRT-PCR法であるが,これがなかなか思惑通りはっきりとした複数のパンドが出現せず苦慮している.現在その原因の究明と対策(塩化マグネシウム濃度,各反応温度,反応時間,反応サイクルの条件の最適化,過去の文献の再調査など)につき検討中である.
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