Research Abstract |
スフィンゴ脂質は,細胞膜を構成する主要な脂質であるが,その生物学的役割に関しては長らく不明であった。しかし,腫瘍壊死因子,インターロイキン-1の細胞内情報伝達系としてスフィンゴミエリン経路(スフィンゴミエリナーゼが活性化し,遊離したセラミドやスフィンゴシンがいわゆるセカンドメッセンジャーとして働く)の存在が確認され,現在では,セラミドやスフィンゴシンは数多くの生物学的活性を有することが知られている。今回は培養表皮細胞(表皮細胞由来の有棘細胞癌より樹立した表皮細胞のcell lineを用いた)におけるこれらスフィンゴ脂質の合成系の律速酵素であるセリンパルミトイルトランスフェラーゼ活性を検索した. 1.培養条件による違い(培養細胞の増殖,分化の影響) 培養表皮細胞は培地中のカルシウム濃度を上昇させることで増殖を抑制し分化を誘導できる.このことを利用して,表皮細胞の分化によるセリンパルミトイルトランスフェラーゼ活性の変化について検討したところ,増殖細胞群と分化細胞群間に有意の差を認めなかった。 2.サイトカインによる影響 活性化T細胞はその分泌するサイトカインの種類によりTh1とTh2の二種類に機能的に分類されるが,各々の代表的サイトカインであるインターフェロン-γとインターロイキン-4の培養表皮細胞セリンパルミトイルトランスフェラーゼ活性への影響を検討した.インターフェロン-γはセリンパルミトイルトランスフェラーゼ活性を抑制する傾向を示したが,一方,インターロイキン-4はその活性を亢進させた。 以上の結果は,各種皮膚疾患における表皮浸潤T細胞の種類により表皮細胞のスフィンゴ脂質合成系が全く異なった影響を受ける可能性を示唆しており,表皮細胞のスフィンゴ脂質の増減がその後の病態にどの様に関わるのかに関して今後,検討していきたい.
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