Research Abstract |
ロリクリンは皮膚のcell envelope(CE)の主成分であり、恐らくCEのうち約75%位はロリクリンであると考えられている。我々はこれまでにヒトのロリクリン遺伝子をクリーニングし,その遺伝子を用いてトランスジエニックマウスを作成した。トランスジエニックマウス作成を用いられたDNA断片は全長20kbであった。このトランスジエニックマウスは全く正常なphenotypeを持ち,このマウスで発現されたヒトのロリクリンは内在性のマウスロリクリンと全く同様に皮膚のケラトヒアリン顆粒及びCEに出現した。皮膚の角化異常性疾患は遺伝性角化症と非遺伝性角化症に大別されるが遺伝性角化症に属する疾患のうち現在遺伝子レベルでの異常が解明されているのは,水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症と葉状魚鱗癬および掌蹠角化症の一部のみである。他の遺伝性角化異常症においては,遺伝子レベルでの異常は全く解っていない。ロリクリンはそCE主要成分であるので,ロリクリンの遺伝子異常(即ちポイントミューテーション)が,ある種の角化異常症の原因遺伝子である可能性は非常に高いと考えられる。我々の研究目的はロリクリンのミュータント遺伝子を用いてトランスジエニックマウスを作成し,角化異常症の動物モデルを作成することである。平成6年度はマイクロインジェクション用のミュータントコンストラクトの作成を行った。ロリクリンはアミノ酸配列上、3ケ所のグリシンに富む領域が存在するがN端からC端にかけて第1、第2、第3グリシンループと名付けられている。今回我々は、第2グリシンループが欠損したコンストラクトと第3グリシンループが欠損したコンストラクトを遺伝子工学的手法を用いて作成した。今後コンストラクトをマウスの受精卵にマイクロインジェクションすることによりトランスジェニックマウスを作成し表皮にどのような変化が生じるかを観察する予定である。
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