Research Abstract |
<はじめに>細胞膜表面上には補体制御因子があり、自己補体の異常な活性化による細胞障害を防いでいる。ヒト表皮細胞膜上にもDAF,HRF20,MCPなどの補体制御因子の存在が確認されているが、培養ヒト角化細胞(ケラチノサイト)における補体制御因子の発現とサイトカイン刺激後の発現の変化について検討した。 <材料と方法>1)HFK cell(Morinaga,Japan),NHEK cell(Kurabou,Japan)を無血清培地にて培養後、細胞を回収し、2×10^5 cells/50μlに調整、マウスモノクローナル抗DAF抗体(lA10),抗HRF20抗体(1F5),抗MCP抗体(M75、M177)と0℃30分反応させた。1%BSAを含む0.01M PBS pH7.4(PBS/BSA)にて3回洗浄後、抗マウスlgG(H+L)FITC conjugateと0℃30分反応させ、PBS/BSAにて3回洗浄後、1%ホルマリン加PBS/BSAにて細胞を固定しフローサイトメーターにて蛍光強度を測定した。 2)上記細胞にlFNγ;500U/ml,TNFα;100ng/ml,lL1α;100u/ml,lL1β;100u/ml,lL3;1400u/m,lL6;40u/ml,lL10;100u/mlの濃度で添加後24時間培養し、1の方法と同様に蛍光強度を測定した。 <結果>1)培養ヒト角化細胞の補体制御因子の発現;HRF20,MCPは90%以上の細胞で発現されていたが、DAFは5-10%の細胞において発現されていた。2)サイトカインによる補体制御因子発現;DAFではコントロールに対し有意な変化を認めなかった。HRF20ではlFNγ添加にて約30%の発現増強がみられたが、その他のサイトカインでは影響を受けず、MCPについては今回用いたサイトカインでは影響を受けないことが明らかとなった。 <考按>今回の検討では培養ヒト角化細胞においても補体制御因子の発現が認められ、HRF20,MCPは90%以上の細胞において発現されていた。DAFは、5-10%の細胞においてのみ発現されていた。これは正常表皮では顆粒層に主に発現されていることより分化に伴い発現が増強するためと推察される。サイトカイン刺激後の変化はlFNγによりHRF20の発現増強がみられたが他のサイトカインでは変化はみられなかった。角化細胞における補体制御因子は比較的安定であり、自己補体による細胞傷害を制御していると推察されるが、他の制御機構が働いている可能性も否定できず、今後の検討課題とおもわれる。
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