Research Abstract |
ラットに四塩化炭素を週1回経口投与し続けることにより,約4-6ヶ月で肝硬変の誘発に成功し,病理組織学的にも明らかな肝硬変ラットの惹起に安定した技術を体得した。更に次のステップとして,肝腫瘍を誘発し各腫瘍の肝特異性造影剤(肝細胞特異性造影剤およびKupffer細胞特異性造影剤)投与後の造影効果の差を検討する予定であった。しかし,その時点で健康なラットと比較し肝硬変ラットに毛色の不良化,運動性の低下等,消耗が強いことに気付いた。今後のお日本における臨床使用では,肝硬変を始めとする肝機能障害の強い患者に両造影剤が使用される頻度が多いと予想され,臨床応用前に動物実験で両造影剤の肝機能障害の強い患者に対する安全性を確立しておく必要性を感じた。そこで,肝腫瘍を惹起してMRIを撮像する実験の前に,肝機能障害の強いラットに対する肝特異性造影剤の投与の安全性を確立するための毒性試験を追加した。すなわち,肝硬変ラットを3群に分け,それぞれの群に対し各造影剤(肝細胞特異性造影剤およびKupffer細胞特異性造影剤)及び生理的食塩水を投与し,肝機能の変動を投与後48時間後まで追跡した。両造影剤共,将来臨床で使用されると予想される通常投与量の約10倍という大量投与で,一過性で軽度の肝機能の悪化を認める傾向があるものの,48時間後には投与前値に回復し,肝機能障害例に対しても安全性が高いと思われた。なお,この毒性試験は,個体数が少なく,最終的には個体数を増やして報告する予定で追加実験の途中である。
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