Research Abstract |
低血糖を呈するIGF-II産生膵外腫瘍(NICTH)における低血糖の発症機構に関する検討を行い以下の成績を得た。(1)NICTH9例の血清を中性条件化でゲル濾過したところ9例中6例で17kDaの溶出部位に小さなピークを認めた。この17kDaの分画を採取しIGF-IIのWestern immunobot(WIB)を施行したところ大分子量IGF-IIが検出された。またWestern ligand blot法にて同じ分画中のIGFBPsを検討したがIGFBPsは検出されなかった。これらの結果よりNICTH症例では血中に遊離型大分子量のIGF-IIが増加していることが考えられた。(2)NICTH症例ではの大分子量IGF-II(11〜18kDa)が認められるが,このを大分子量IGF-IIをO-glycanaseで処理した後にIGF-IIのサイズを検討したところ,IGF-IIのサイズは〜9.5kDaに減少した。この結果よりNICTHの大分子量IGF-IIはO-glycosylationをうけており症例により糖鎖のサイズが異なることが示唆された。(3)NICTHでの血中IGFBPsをWIBで検討したところIGFBP-2の増加とIGFBP-3の減少がみられこれらの所見は腫瘍摘出術後に正常化した。なおNICTH症例の血清を中性条件下でゲル濾過した結果、正常人血清にみられる150kDa,40kDaのIGF-II-IGF結合蛋白複合体は認められず,全例で60-80kDaのIGF-II-IGF結合蛋白複合体が検出された。この結合型IGF-IIは大部分が大分子量IGF-IIであった。150kDa,60-80kDaの分画中のIGFBP-3をWIBで検討したところ本症では健常人に比べ150kDa分画中のIGFBP-3の減少,60-80kDaの分画中のIGFBP-3の増加がみられた。 以上の成績よりNICTH症例では大分子量IGF-IIが遊離型または小分子IGF-II-IGF結合蛋白複合体として存在し低血糖の発生に関与している可能性が考えられた。
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