Research Abstract |
TNF-αは,HL-60あるいはU937などの造血器腫瘍細胞株に対してapoptosisによる増殖抑制効果を示し,sphingomyelinの分解産物であるceramideが重要なsignal transducerであることが報告されている。我々は,造血器腫瘍細胞株に発現しているTNF-α receptor(TNF-R)の解析により,その発現パターンとTNF-αに対する感受性との間に相関があることを見いだした。そこで,TNF-Rを発現していないTNF-α耐性株に対しても細胞透過性ceramideが増殖抑制効果を示しうるか否か検討をおこなったところ,TNF-α感受性株であるHL-60はTNF-R p55,p75両者を発現し,TNF-αおよびC2-ceramideで増殖抑制が見られた.TNF-α耐性株であるRaji(Burkittリンパ腫細胞株)はTNF-R p55,p75両者とも発現していなかったが,C2-ceramideで増殖抑制が見られた.その機序について解析したところ,RajiにおいてもC2-ceramideにより,HL-60と同様に転写因子のひとつであるNF-kBの活性化が観察された.TNF-Rを発現しないTNF耐性細胞においても,cell-permeable second messengerがTNF-α感受性株と同様の機序を介して増殖抑制効果を示すことが示された. また,TNF-αの治療薬としての臨床応用上の問題点は血管内皮細胞に対する副作用が主とされているので,TNF-αおよびceramideの血管内皮細胞に対する生物学的効果の異同についても解析を行ったところ,TNF-αおよびC2-ceramideはともにtissue factor活性を増加させたが,細胞接着分子の発現に対する作用はC2-ceramideで軽微であった.以上の結果は細胞透過性ceramideが抗腫瘍剤として有用である可能性を示唆している。 これらの内容は平成7年度日本血液学会総会および日本網内系学会総会で発表する予定である。
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