Research Abstract |
1.対数増殖相における解析:巨核球系細胞株MEGO1Sに10nMのTPAを添加して24時間培養すると,増殖が停止し,フローサイトメトリーによる解析では81.1%の細胞がG0/G1期に存在した.ノーザン解析により細胞周期関連遺伝子の発現を検討すると,TPA刺激後24時間以内にサイクリンA,B,Cは順次発現が低下し,またS期を示すヒストンH4 mRNAも,サイクリンAと同様にTPA添加直後から急速に低下した.一方,D型サイクリン,サイクリンEは72時間まで変化せず,TPAによりMEGO1S細胞の多くは,D型サイクリン,サイクリンEを発現するG1/S移行期に細胞周期を停止することが示された.巨核球分化マーカーであるGpIIbは,24時間後にmRNAの上昇が始まり,48時間後にピークに達した.72時間以降immunocytochemistoryでもその蛋白は検出され,G1/S以降期に停止したのち分化誘導が生じていると考えられる. 2.細胞周期同調による解析:Thymidine-Aphidicoline double blockによりG1/S移行期に細胞周期同調した細胞培養にTPAを添加すると,G1/S期から細胞周期を一周してG1期で停止する細胞に加えて,G2/M期にも約25%の細胞が停止していた.これは,TPAがS期でも作用しG2/M期での停止を誘導していることを示している.現在,他の巨核球系細胞株や,正常巨核球コロニーに対しても同様の作用を持っているかどうかを検討している.今後,TPAによる細胞周期停止の分子機構と分化誘導との関連を明らかにしたい.分化に伴う細胞周期制御の解析を優先したため,G1サイクリン過剰発現の影響の検討は進められなかった.
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