Research Abstract |
(1)リンパ節・末梢血の腫瘍細胞におけるbc1-2蛋白発現の有無 【対象と方法】ATL72例(急性型33例,リンパ腫型32例,慢性型7例)の生検リンパ節を用いた.bcl-2蛋白の発現はビオチン-アビジン法により検索した.さらに,一部の症例では末梢血腫瘍細胞を用いてFACSにより測定した.【結果と考察】bcl-2蛋白は41例(56.9%,急性型18/33・リンパ腫型19/32・慢性型4/7)に発現していた.ATLにおいてbcl-2蛋白がapoptosisの抑制に関与しているならば,bcl-2蛋白陽性例の予後は悪いと予測される.しかしbcl-2蛋白の発現と予後の間に予測されたような関連はなく,臨床病型とも関連は認められなかった.bcl-2蛋白がATL発症後の病態の変化に関与する可能性は低いと考えられた.しかしながら慢性型ATLと急性型ATLにおいて末梢血腫瘍細胞のbcl-2蛋白の発現には有意の差があり,このことは慢性型から急性型への病態の変化にはbcl-2蛋白の発現が関与している可能性を示すものと考えられる(manuscript preparation). (2)bcl-2の発現をin vivoで誘導することによるATLモデル動物の開発 【対象と方法】動物としては,HTLV-lに対するlow responderラット(LEW)を用いた.HTLV-lキャリアラットはMT2細胞を注射することにより作成した.bcl2の発現誘導には,LMP1がbcl-2の発現を誘導することが知られているEBウイルス,さらに直接にapoptosisを抑制するアデノウイルスE1B,E3などを主として用いた.【結果と考察】現時点で実験開始から約1年半が経過したが,まだ確実なATLは発症していない.しかしながら1年経過後からウイルス性肺炎などの感染症が発症するようになり,免疫能の低下を来たしていることが疑われるので今後のATL発症が期待される.
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