Research Abstract |
平成6年度の研究計画は概ね実施され,その結果は1995年のBloodに論題“Membrane-bound Steel factor induces more persistent tyrosine kinase activation and longer life span of c-kit gene-encoded protein than its soluble form"として発表された。その内容は以下の通りである。 Sl/Sl homozygoteより樹立したfibroblastic cell lineに,alternative splicingされた各ヒトSteel factor cDNAを遺伝子導入し,膜結合型(Sl4-h220)及び分泌型(Sl4-h248)Steel factor(SLF)のみを選択的に産生するstromal cell lineを作成した。このstromal cellをSLF各isoformのsourceとして用いて,factor-dependent cell lineであるMO7e細胞と共培養を行い,経時的に細胞内蛋白を可溶化。anti-phosphotyrosineモノクローナル抗体を用いたimmunoblottingによりMO7e細胞内蛋白のtyrosine phosphorylation,c-kit蛋白(KIT)の活性化のkineticsについて検討を行った。膜結合型SLFは分泌型SLFに比べて長時間にわたりKITの活性化を誘導し,かつ,リガンド結合後のKIT蛋白の半減期が著明に延長された。この膜結合型SLFの系に recombinant soluble SLFを添加することにより,KITのキナーゼ活性の不活化が迅速となり,かつ,KIT蛋白の半減期は著明に短縮した。Flowcytometryでは,分泌型SLF刺激後ではKIT-リガンド複合体の internalizationによりMO7e細胞表面のKIT発現量は急激は低下したのに対して,膜結合型SLF刺激ではKITのdown modulationは誘導されなかった。このように,膜結合型および分泌型SLFではKITの活性化のkinetics,半減期が大きく異なることが明らかとなり,この差は両SLF isoformの生物活性の差として反映されることが示唆された。また,ligand-receptor複合体の細胞内へのinternalizationおよびそれに続く分解は,活性化されたKITのスウイッチをオフにする機構としても作用していると考えられる。
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