Research Abstract |
【研究方法】1.無気肺-再膨張モデルの作製:家兎を用い,気管切開部末梢側の気管前壁に小孔を開け,ここからバルーンカテーテルを右主気管支に挿入し,無気肺を作製した.1時間の肺虚脱後カテーテルを抜去し,再膨張をはかった.経時的に採血し,末梢血白血球数,血液ガス分析を行った.2時間観察後,右肺を摘出し,肺湿乾重量比測定,組織学的検討に用いた. 2.白血球動態の検討:生体肺微小循環観察法を用いて,白血球動態を観察した.白血球,血管内皮細胞の生体染色を行ない,蛍光顕微鏡を用いて経時的に観察し,一視野中の粘着白血球数カウントした. 3.H_2O_2産生量の検討:2´,7´-dichlorofluorescein diacetate(DCFH-DA)を用いてH_2O_2を画像化し無気肺・再膨張過程のH_2O_2産生量を測定した.画像解析で蛍光を示す画素数を算出し,H_2O_2産生量の指標とした. 【結果】1.無気肺により末梢血白血球数の低下が生じた.無気肺・再膨張後,PaO_2の低下,A-aDO_2の有意な開大を認め,病理組織学的に肺障害が生じていた. 2.生体肺微小循環中で無気肺を契機とした肺毛細血管への白血球の粘着が生じ,再膨張後も多数の粘着を認めた. 3.H_2O_2産生量は,無気肺作製前,無気肺中には低値であったが再膨張後には急激に増加し,その後の経過中も高値を継続していた.また,H_2O_2産生量とA-aDO_2の変化は有意に正の相関を示した. 【まとめ】無気肺・再膨張過程において,無気肺による肺への白血球のsequestrationが生じ,再膨張後には肺毛細血管に粘着した白血球によるH_2O_2産生が急激に増加する事実を生体肺で観察しえた.このことより,再膨張性肺水腫の成因として,白血球の活性酸素産生増加が重要な因子であることが示唆された.(未発表)
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