Research Abstract |
外科手術後の腹腔内感染症などに起因する多臓器不全は、重篤な転帰をもたらす事より、病態成立の機序解明が急務となっている。今回我々は、ET血症の中でも特に激しい炎症細胞浸潤伴い、高率に多臓器障害を来す事で知られるrabbit Shwartzman反応を作製し、臓器傷害機序解明を試みた。 1)0.04mg/kgのLPSを36h間隔で2回静注し、Rabbit前身性Shwartzman反応を作製した。各時相において(1)肝臓・肺臓の組織所見、分離した好中球の (2)血管内皮細胞への接着能 (3)好中球の表面抗原(CD11a,b,CD18)発現 (4)組織血管内皮の表面抗原(ICAM-1)発現をフローサイトメトリー、及び免疫組織染色にて測定し、ET1回投与(E1)群と2回投与(E2)群との相違を解析した。 2)さらに好中球の接着抗原CD11bに対するモノクローナル抗体(MAb)M1/70を2mg/kg2回目のLPS投与10分前に静注し、このMAb投与群とShwartzman反応群との組織所見・各好中球機能を比較した。 1)LPS1回投与3h後肝肺各臓器に好中球主体の炎症細胞浸潤を認め、24h後には消失した。LPS2回投与3h後ではさらに多量の好中球の集積を認め、24h後には著名な出血壊死が出現した。 2)好中球の血管内皮細胞に対する接着能は、E1群182+60%,E2群295+74%とE2群で著名に亢進していた。 3)好中球表面の接着抗原CD11a,CD11b,CD18の発現量はE1群E2群共に高値を示した。 4)組織血管内皮のICAM-1発現はE1群E2群共に増強していた。 5)抗CD11bMAb投与により、臓器への好中球の集積・出血壊死いずれも阻止された。MAb投与群における好中球の接着能は178+29%とE1軍のレベルまで抑制された。 今回の実験では、E2群において好中球は血管内皮接着能が有意に増強していた。この好中球は接着分子Mac-1が、血管内皮はICAM-1がそれぞれ発現の増強を認めた。そこでM1/70を用いて接着能を特異的に抑制すると組織傷害が阻止できた。すなわち、Shwartzman反応においては好中球・血管内皮の過剰な接着が、好中球の病巣への遊走を防げ、正常組織を傷害している可能性が示唆された。
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