Research Abstract |
〔目的〕肝切除術後の血中エンドセリン濃度(Et-1),肝組織血流量(TBF)の変動と肝障害,肝再生との関係について検討した。 〔方法〕SD系雄性ラット(体重300g)を用いて、単開腹群,70%肝切除群を作成,(1)Et-1(2)TBF(レーザードプラー法)(3)血中GOT,GPT(4)血中Ornithine carbamyl transferase(OCT)(5)肝病理組織像:H-E染色,PCNA-Labelling index(LI)について,経時的に測定し、比較検討した。さらに肝切除群をウリナスタチン(UTI)15000単位を肝切除前に投与した群および非投与群に分け同様に比較した。 〔成績・考察〕肝切除直後には残存肝へ過剰な血液が流入し、これによるwall stressや類洞の血管内皮細胞からのEt-1放出が起こり、Et-1レベルが上昇する。Et-1レベルの上昇は肝切除直後の過剰な血流の増加による肝組織障害を抑えるための生体反応とも考えられるが,過剰反応によりTBFが減少すると,これによる組織障害の発生,組織修復の遅延が生じる可能性がある。今回の結果でも肝切除直後TBFが増加し、3時間後Et-1が上昇,そして3〜24時間後にTBFの減少およびGOT,GPT,OCTが上昇した。しかし、一方でUTI投与群でEt-1レベルには非投与群と差が見られず,それにもかかわらず,TBFが良好なレベルに保持され,さらにGOT,GPT,OCTの上昇が抑えられ,PCNA-LIが高値を示した。このことは,Et-1過剰反応を抑制し,TBFが適度に維持されれば,肝障害が軽減し,肝再生が促進されることを示唆しているものと考える。現在、肝硬変における肝切除術に関して同様の検討を行なっている。
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