Research Abstract |
1.対象と方法:対象を、当院で1980年4月より1989年3月手術を施行した胸部食道扁平上皮癌症例122例(C-0症例を除く)とし,それぞれのホルマリン固定パラフィン包埋切片からHE染色で腫瘍部と正常部を検鏡下に同定後DNAを抽出し、^<32>Pでラベルしたcyclin D1及びint-2のプローブを用いてスロットブロット法を施行した。各遺伝子の3コピー以上を遺伝子増幅とした。 2.結果:胸部食道扁平上皮癌122例において、CyclinD1遺伝子増幅はint-2遺伝子の同時増幅を伴い、122例中28例(23.0%)で遺伝子増幅を認めた。これら増幅群28例では、非増幅群94例に比し術後生存率は有意に低下していた(Kaplan-meier法,p<0.01)。また,増幅群28例中20例(71.4%)に術後再発を認め、その再発形式は28例中18例(64.3%)で遠隔臓器再発であり、いずれも非増幅群と比較し有意に高率であった(χ2検定、P<0.01)。しかし、再発形式としてのリンパ節再発には両群間に差を認めなかった。また、増幅群と非増幅群の2群間に背景因子(年齢、性、術式、進行度、補助療法等)及び、病理学的因子(分化度、浸潤形式、n因子、深達度、脈管侵襲等)において差を認めなかった。またCyclinD1遺伝子増幅の有無とTMN因子やその他の臨床腫瘍学的因子をCoxの比例ハザードモデルを用いた多変量解析を行い,n因子につぐ術後生命予後への寄与を認めた。
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