Research Abstract |
免疫抑制剤タクロリムス(FK506,以下FK)は従来の製剤に比べ副作用が少ないが,膵臓では内外分泌組織共に障害性がある。このような副作用の少なくとも一部は,PPIase活性の抑制によりラ島機能発現に関連したタンパクが高次構造を発現できなくなるため生じるのではないかとの仮説のもとに実験を行った。 Wistar系成熟雄性ラットを4群に分け(各群n=5),1群:生食,2群:FK1mg/kg,3群:FK3mg/kg,4群:FK5mg/kgをそれぞれ7日間連日筋肉内投与し,7日目に開腹し膵臓を摘出。コラゲナーゼ液(Sigma Type V)を灌流し静置消化のうえFicoll-Conray不連続密度勾配法にてラ島を単離した。ラ島に含まれるインスリンは44.7±2.3mg/rat,グルカゴンは1.10±0.16mg/ratであり,FK5mg/kgの投与ではインスリンはやや減少する傾向にあった。単離されたラ島を0.1M Tris-HClに溶解し可溶性タンパク分画を抽出し,PPIase活性の測定と二次元電気泳動による解析を行った。 PPIase活性は尿素変性RNaseT1を用い,蛍光分光光度計268nm→320nmの測定によった。目下再現性の点を含め検討中である。二次元電気泳動ではFK投与群では対照群に比べ幾つかの高分子タンパクのスポットが消失し代わりに低分子領域にスポットが出現,タンパクの低分子化と推測されるこの変化はFKの濃度依存性であった。最も大きく減少したスポットはアミラーゼであり,概して外分泌組織由来のものの方が変化が大きいようであった。免疫泳動による測定は膵ペプチドホルモンに関する検討のみに留まり,カルシニューリン,リソスタチン(ラ島再生タンパク),FKBP12等の解析については今後の課題として残った。
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