Research Abstract |
Pulsinelliらの方法により,10週齢のウィスター系雄ラットに一過性(30分)の前脳虚血を負荷した後,0,3,6,12時間,1,2,3,5および7日後に屠刹して連続凍結切片を作成し,海馬の神経細胞における虚血後の経時的な形態変化を病理組織および免疫組織化学的検討に検討した。免疫組織化学的検討には、ヒトのμ-及びm-カルパインのN末端側(μ-,m-CL_<(NH2)>と略)及び両者に共通する活性部位(CL_<(a)>と略)のアミノ酸配列を持つポリペプチドを合成し,これらを認識するウサギポリクローナル抗体を用いてABC法で免疫染色した.また,カルパスタチン(CS)のLドメインに対する抗体を用いて同様に染色した. その結果,正常のCA1,3や歯状回の神経細胞においては,μ-,m-CL_<(NH2)>及びCL_<(a)>は,細胞体や樹状突起の起始部に弱陽性を示し,アイソザイムによる差は認めなかった.CSもCLと同様の局在を示した.虚血後2日目までの海馬神経細胞には明らかな変化を認めず,また,μ-,m-CL_<(NH2)>及びCL_<(a)>およびCSの染色性にも明らかな変化はなかった.虚血後3日目には,CA1の錐体神経細胞に変性,死が見られ,その細胞質や核において,μ-,m-CL_<(NH2)>及びCL_<(a)>の陽性所見が増強していた.CSも同様に細胞質や核に陽性所見が増強していた.以後7日目までは,μ-,m-CL_<(NH2)>及びCL_<(a)>やCSの染色性は,細胞死が進行したCA1神経細胞の核に残存していたが,細胞破壊が進んだ樹状突起における染色性は低下した.これに対して,遅発生神経細胞死が生じなかった歯状回の顆粒細胞には,前脳虚血後μ-,m-CL_<(NH2)>,CL_<(a)>,CSの染色性や局在に明らかな変化を認めなかった.それぞれの酵素活性の経時的変化については,現在検討中であるが,遅発生神経細胞死が進行する過程では,CLの活性化とこれに伴う構造変化が虚血後3日目より生じると考えられ,CSの活性化も同時に生じていると考えられるが,CLの活性がCSの活性を上回っている可能性を明らかにした.
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