Research Abstract |
本年度の研究課題は,ハンマーの叩打動作における,振り下ろす上肢の肩,肘,手関節の角加速度とハンマーの叩打力の関係を明らかにすること.更にハンマーの重量の変化が叩打力と振り下ろされるハンマーの軌跡に及ぼす影響について検討することである. 対象は健常男性12名,平均年齢は20.9±2.1歳である.叩打に用いたハンマーは木製で重量0.55Kgと重量0.80Kgの2種類のハンマーを用いた.ランドマークは,ハンマーの側面中央部,手関節,肘関節,肩峰突起,上前腸骨棘の5ヶ所につけ,ハイスピード・ビデオ・カメラ(ナック社製HSV-400)で撮影し,振り下ろし動作を0.05秒間隔に分割して,各座標点を求めた.更に各座標点の経時的変化からハンマーの運動加速度(a)を求め,ハンマーの重量(m)との積によってハンマーの叩打力(F=ma)を算出した.重量0.55Kgのハンマーの叩打力は38.2±26.2N,重量0.80Kgのハンマーの叩打力は48.6±30.6Nで有意な差を認めた.一方,振り下ろしの軌跡について見ると,重量0.55Kgのハンマーは,重量0.80Kgのハンマーの軌跡に比べ,振り上げの高さが低く,小さな弧を描きながら振り下ろす様相を示した.また叩打力は互いに高い相関関係(r=0.87)を示し,すなわちハンマーの重量を変化に関わらず,叩打力の強い者は強打し,弱い者は弱く打つことが示された.振り下ろし動作を前期,中期,後期の3期に分類し,各期ごとの加速度変化について比較すると,叩打力の強い者の特徴は,前期,中期で肩関節と肘関節による落下運動に,後期で肘関節と手関節の回転運動が加わり,ハンマーの加速度を最大にさせ,叩打していることが明らかとなった. 以上の点から,臨床場面において患者に効率的な振り下ろし方や,力強い叩打力を引き出すための具体的な訓練方法が示唆された.
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