Research Abstract |
[実験方法]最初に前処置として,8週齢ウィスター系雌ラット60匹に対し、(1)両側卵巣摘出後低Ca食飼育:20匹,(2)両側卵巣摘出後普通食飼育:20匹,(3)Sham手術後普通食飼育:20匹,の3群を作成した。3カ月後,すべての右大腿骨骨髄内に泥状の合成ハイドロキシアパタイトセメント(HA)を注入し,4,8,12週後に6匹ずつ屠殺し,両側大腿骨を摘出した。この際,骨代謝を調べるために,屠殺前10日にカルセイン0.8mg/100g,3日前にオキシテトラサイクリン2.0mg/100gを腹腔内注し二重標識を行った。摘出した両側大腿骨をVillanueve染色後,メチルメタクリレート系包埋し骨幹中央部で薄切非脱灰標本を作成し蛍光顕微鏡にて観察した。 [結果] 1.新生骨形成 (3)群では4週でHAに接する新生骨形成を認め,経時的にその量は増加した。(1)および(2)群では4週では認めず,8週でHAに接する新生骨形成を認め,(3)群と同様に経時的に増加したが,(3)群に比べて骨量の低下を認めた。 2.骨代謝 蛍光顕微鏡では,カルセインは黄色に発色し,オキシテトラサイクリンは黄緑色に発色を示した。卵巣摘出を行った(1)および(2)群では(3)群に比して二重標識を示す部位が多数存在したが,標識間の距離は短く,高速回転型の骨粗鬆症モデルを示した。 (2)および(3)群ではHA注入,非注入大腿骨の既存骨皮質に変化を認めないが,(1)群ではHA注入大腿骨に,新生骨を認めない4週から既存骨皮質の空隙が生じ,新生骨の形成とともにこの空隙が大きくなるのを認めた。非注入側ではこれらの変化を認めないことから,萎縮骨内においては,良好な骨伝導を有するHAによって,既存の骨皮質からのCaおよびPの溶出が進み,既存骨の萎縮化が進行する可能性が示唆された。
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